塗りかけのまま止まってしまった絵について
途中で止まるのは意志の問題ではなく、絵の構造の問題です。進むほど手ごたえは下がり、手間は上がる。そのうえでの、どれも等しくまっとうな三つの道。
八割方は塗った絵が、何週間も開かれないまま残っている。開けば十分か二十分で終わるのは分かっているのに、開く気にならない。そして開かないこと自体が、少し後ろめたい。この記事を読みに来た人は、たぶん励ましを探しているわけではないと思います。なぜそうなったのかの説明が要るはずです。
止まったのは構造の問題です
塗り絵は、進むほど楽しくなくなるようにできています。これは作りの悪さではなく、避けようのない性質です。
絵が埋まっていくと、残っている領域は小さいものと、離れて散らばっているものに偏ります。大きくて見つけやすい領域から手をつけるのは自然ですから、後半に残るのは自然と細かいほうです。つまり一回の操作にかかる手間は、後半になるほど増えていきます。探す時間が増え、拡大の回数が増え、狙いを外す回数も増えます。
そして同時に、残る色は淡いほうへ偏りがちです。濃い色は目立つので早く片づけられ、生成りやうすい灰色は最後まで残る。淡い色は塗っても画面がほとんど変わらないので、一回押したときの手ごたえが小さい。
この二つを並べると、何が起きたかがはっきりします。一回あたりの手ごたえが下がるのは、一回あたりの手間が上がるのとちょうど同じ時点です。前半の、押せば押すだけ絵が変わっていくあの感じは、後半には構造的に存在しません。飽きたのではなく、条件が変わったのです。
三つの道
ここから先に、正解は一つではありません。以下の三つは、どれも等しくまっとうな選択です。
単位を縮めて再開する
「この絵を終わらせる」を目標にしているうちは、残り二百領域という塊と向き合うことになり、それは重いです。単位を一枚から一色に縮めます。今日はこの番号だけ片づける、終わったら閉じる。一色ぶんなら数分で終わりますし、終わったという感覚も一回ぶん手に入ります。
このやり方が効くのは、残り作業を分割するからというより、終わりの位置がはっきりするからです。どこまでやれば終わりなのかが見えない作業は、それだけで始めにくくなります。
見切って、小さい絵に移る
その絵を完成させなくても、何も失われません。塗りかけの絵はあなたに借りを作っていませんし、放っておかれたことで傷つきもしません。次の絵を、もっと領域の少ないものにして始めればよいだけです。
むしろ、途中で止まった経験は情報として役に立ちます。あの密度は自分には重かった、というのが分かったわけですから、次に選ぶ絵の基準が一つ増えたことになります。
そのまま置いておく
三つ目が、たぶんいちばん過小評価されています。何もしない。決めない。開かない。進み具合は端末に残っていますし、絵は劣化しません。三か月後に開いたときも、そのままの状態で待っています。
半年経ってから、ふと開きたくなることは実際にあります。そのときに再開すればよいですし、しなくても構いません。塗りかけであることは、片づけなければならない問題ではありません。
完成させられない、という言い方について
最後に一つだけ、はっきり否定しておきたいことがあります。「途中でやめてしまう自分は意志が弱い」という枠組みです。
これは気晴らしです。仕上げる義務はありませんし、誰かに提出するものでもありません。塗っているあいだが楽しければ、そのぶんの価値はもう受け取っています。完成した絵は、その副産物にすぎません。副産物が手に入らなかったからといって、本体が失われたわけではありません。
止まった絵が気になるなら開けばよいし、気にならないなら開かなくてよい。それ以上のことは、この絵にはありません。
よくある質問
なぜ後半になると急につまらなくなるのですか
残る領域が小さく散らばったものに偏り、探す手間と操作の回数が増える一方で、残った色は淡いほうへ偏るので一回塗ったときの変化が小さくなるからです。手間が上がるのと手ごたえが下がるのが同時に起きます。飽きっぽさの問題ではありません。
塗りかけの絵は消したほうがよいですか
消す必要はありません。進み具合は残ったままで、絵が傷むこともありません。気になるなら消しても構いませんし、そのまま何年置いておいても構いません。どちらにしても、あとで困ることは何もないはずです。
再開するときのコツはありますか
一枚を終わらせようとせず、一色だけ片づけて閉じることです。残り全部と向き合うと重いですが、一色なら数分で終わりが見えます。どこまでやれば終わりかがはっきりしている作業のほうが、単純に始めやすくなります。
完成させないと意味がないのでは
そうは思いません。塗っているあいだの時間が目的で、完成した絵はその副産物です。副産物が手に入らなくても、過ごした時間は失われていません。仕上げる義務はありませんし、途中でやめたことに説明も要りません。
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